弊社提携医療機関の福岡アイマックスクリニックにおける樹状細胞ワクチン療法の臨床成績
2011年 第49回日本癌治療学会『がん抗原ペプチドWT1およびMUC1を用いた樹状細胞ワクチン療法の臨床成績』
辻谷 俊一1、谷井 貢2、米満 吉和3 他
1九州大学大学院医学研究院 がん先端医療応用学講座
2医療法人社団医創会 福岡アイマックスクリニック
3九州大学大学院薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学講座
【背景】
樹状細胞(Dendritic Cell:DC)ワクチン療法は、前立腺癌や脳腫瘍で有効性が認められている。また、米国FDAの承認を得て、2010年から前立腺癌の診療が行われている。その一方で、多くの癌において、有効な癌抗原は判明しておらず、その探索は、重要な課題となっている。
【目的】
本研究では、医療法人社団医創会福岡アイマックスクリニックにおいて主にWT1やMUC1をパルスして樹状細胞ワクチン療法を行った症例の①PS(Performance Status)、②奏効率・制御率、③生存率、をレトロスペクティブに解析し、樹状細胞ワクチン療法の有効性を検討した。
【患者と治療法】
■ 解析対象
2009年9月から2011年9月に医療法人社団医創会 福岡アイマックスクリニックで樹状細胞ワクチン療法を行った、のべ228例を対象とした。原則的に放射線療法や化学療法などの標準療法を併用した。
■ 治療方法
単独あるいは複数の癌抗原をパルスした成熟樹状細胞ワクチン(1×107)を1回/2週、7回を1コースとして投与した。
■ 癌抗原
人工抗原WT-1(*1)、 MUC1 またはその他の抗原から各患者に適合する抗原を、単独あるいは複数選択して使用した。
(*1) 治療の前にHLAの型が適合するか否か、検査を行った。今回は、 HLA-A*2402 および/または 0201が対象となった。
■ PS
ECOG Performance Status に基づいて判定した。
■ 効果判定
画像診断ができればResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)に基づいて判定したが、腫瘍マーカーのみの場合は50%以上低下をPR、2回以上正常化すればCRとした。
【結果】
成分採血をした228症例の中で、特に多かった癌種は、膵癌(44例)、肺癌(30例)、胃癌(21例)、大腸癌(21例)だった。 228症例(100%)中で重複例を除くと、実際に樹状細胞ワクチンを投与した患者は、213例(93%)だった。樹状細胞ワクチン5回投与未満で死亡した患者は、61例(27%)、5回以上投与した患者は、134例(59%)だった。その中で、樹状細胞ワクチンを7回、すなわち1コース投与出来た患者は、107例(47%)だった。
<資料①>
はじめの1年間、すなわち2009年10月~2010年9月に樹状細胞ワクチン療法を開始した中で、樹状細胞ワクチン7回完遂できた症例は、PSが0~1では40例中25例(63%)、PSが2~3では19例中2例(11%)だった。また、樹状細胞ワクチン7回投与終了時からの1年生存率を調べたところ、樹状細胞ワクチンを7回完遂した症例の1年生存率は、57.6%だった。
PSが不良(2以上)の症例は、樹状細胞ワクチン7回完遂が困難であると考えられるが、樹状細胞ワクチン7回完遂した症例では、比較的長期の生存が期待できる可能性が示唆された。
<資料②>
樹状細胞ワクチンを7回完遂した症例のうち、2コース以上投与4例、判定不能5例、再発 予防投与2例を除いた樹状細胞ワクチン7回完遂20例の臨床成績を調べた。CR4例、PR4例、SD9例、 PD3例となり、奏効率(CR+PR)40%、病勢制御率(CR+PR+SD)85%だった。
<資料③>
樹状細胞ワクチン7回完遂20例の1年生存率を奏効率別にみると、CRでは75%、PR症例では100%、SD症例で67%、PD症例では33%だった。PD症例以外は、長期生存を期待できる可能性が考えられた。
<資料④>
樹状細胞ワクチン7回完遂症例の1年生存率を疾患別に調べたところ、大腸癌と腎癌(100%)、胃癌(86%)、乳癌(83%)などが良好だった。一方で肺癌(57%)、卵巣癌(50%)、膵癌(35%)だった。胆道癌は最長追跡記録が9ヶ月だが、死亡例は未だ認められていない。進行大腸癌や腎癌などは、樹状細胞ワクチン療法が有効である可能性が考えられた。
【考察】
①樹状細胞ワクチン療法の効果を判定する手法として、RECIST以外にOSやPFSを検討していく必要があると思われる。
②奏効した症例では、比較的早期の「再燃」を少なからず認めた。これは、「ワクチンとしての機能」が不十分であることを示唆している。樹状細胞のメモリー機能のアッセイ法を確立することと共に、これも検討課題である。
③樹状細胞ワクチン療法に対する併用療法の臨床効果を明確化するために、今後、前向き試験による検討が必要と考えられる。
【結語】 WT1、MUC1などを用いた樹状細胞ワクチン療法は、標準治療併用で臨床的に有用な可能性が示唆された。しかしながら、PS不良例の樹状細胞ワクチン療法は、治療完遂率が低かった。








